ミネルバ大学 双方向型オンライン授業を支えるテクノロジー

ミネルバ大学の授業は全てオンラインで行われることを知人に説明すると、大抵は大手予備校が導入しているような録画式授業か、Skypeのようなオンラインコールを思い浮かべます。私も実際に授業を受けるまでは、パソコンの画面越しにどこまで教授やクラスメイトとコミュニケーションが取れるかまるで想像もつきませんでした。

しかし、ミネルバ独自のオンラインプラットフォーム、Active Learning Forum(通称ALF)は学生の学習効果を向上させるために綿密にデザインされており、私の期待を良い意味で裏切ってくれました。

ミネルバでの授業も既に7週目を迎え、ALFの全ての機能や授業の流れが一通り理解できたところで、反転授業を活用した、インラタクティブな授業を支えるALFの仕組みを皆さんにお伝えできればと思います。

学習効果を最大限に引き出す、ALFの授業内の基本的な構造

ミネルバでは どの学生も先述のALFというアプリをパソコンにダウンロードしています。ALFからは各授業にアクセスできるだけではなく、録画された授業を後から見返したり、授業評価を確認したりすることができます。

学生は授業に参加する前に、各授業のアナウンスを確認し、学生は課題図書を読んで事前課題に取り組みます。例えば4週目のComplex Systemの授業ページにアクセスすると、下記(画像1)のように表示され、授業のLearning outcome、課題図書、事前課題が確認できるようになっています。

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授業後は“Assessment”から授業の録画とパーソナライズされた授業内評価が閲覧できる(画像1)

授業の開始時刻近くになると“Enter Class”のボタンを押して、“教室”に移動します(画像2参照)。基本的に常に授業内ではパソコンのスクリーンの上部に教授と学生全員のライブ動画が映し出されていて、お互いのリアクションを確認できるようになっています。どの授業も18人以下のセミナー形式で行われており、通常の大学の大講堂での授業では、周りの学生と雑談が始まったり、他の学生の話し声で教授の声が聞こえなかったり、ということもあるかと思いますが、ミネルバの授業は 個々が異なる場所で受講している上に、発言している以外の学生のマイクはミュートになっているので、なんの障害もなく授業に没頭することができます。

効果的なコミュニケーションを促進する機能として、画面右側のサイドバーには発言や質問をしたい時に「挙手」できるボタンや、単純な質問に対する回答を素早く収集するのに役立つ「Yes/No」ボタンが収納されています。発言しようとしたが時間の都合上 教授が指名できなかった場合や、自分の意見を思い通り伝えられなかった際、フォローアップのコメントをしたい時などにはチャット機能が幅広く活用されており、一人ひとり学び漏れの無いようにする工夫が充実しています。また、特定のショートカットキーを押すことで「賛成」や「困惑」等の絵文字を個人の画面に表示できるようになっており、他の人の発言を遮ることなく自分の意見を伝えることができます。

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他の学生の陰で授業と関連のない作業をしたり、教室の端で居眠りしたりする学生もいない(画像2)

上記の画像からも分かるように、授業内ではスクリーンにGoogleドキュメントを表示し共同で作業することができます。教授が学生と共有するスライドはオンタイムで書き込みも可能なので、大講堂での「遠くてプロジェクターが見えない」や「配られたプリントを見ても教授がどこの箇所を指しているのか分からない」といった“あるある”に悩まされることも全くありません。

もともと少人数のクラスではありますが、毎授業さらに小さなグループに分かれてディスカッションをします。この時も机を動かしたり、グループ割りを決めたりするような時間の無駄はなく、システムが過去のデータを元に学生を均等に振り分けます。グループワーク中も教授は各グループのディスカッション内容や進捗度合いを見聞きすることができ、必要に応じて学生をサポートできる体制が整っています。

授業内では学生の理解度を確認するため、また多様な考え方をクラスメイトから学ぶために「Poll Question」と題したアンケートを頻繁に取ります。集められた回答は教授だけが見ることもできますが、クラス全員で閲覧することも可能で、多くは他の学生の意見をもとにディスカッションを重ねます。また選択問題の場合は集めた回答がすぐにグラフ化されるのも、通常の教室ではなくALFだからこそできることでしょう。

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個人レベルでの指導を可能にするフォローアップシステム

ミネルバ大学の特徴の一つに「テストがない」ことが挙げられます。その代わり、学生は授業中の発言やPoll Questionの回答、および研究課題に対し5段階の評価が与えられます。これは、実社会ではテストが無い代わりに日々の成果が評価されることを考慮したものです。

録画された授業は“Assessment”(画像1参照)から確認できます。トップページには自分の授業内での発言にすぐ飛べるようになっているので、教授から自分の特定の発言に対するコメントがある場合もすぐに前後の授業の流れを把握することも可能です。また、授業内では 自分が後で見返したい瞬間を「ブックマーク」することもできて、効果的に復習できる工夫が施されています。授業内での自分のPoll Questionの回答をまとめたページでは、各回答に対する教授による評価とコメントを見ることができます。

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Assessmentのトップページ。“Who”というパラメーターの設定を変えることで、教授または特定の学生の発言のみ表示させることもできる。もちろん録画動画の閲覧速度を変えることも可能。(画像10)

Assessmentページでは授業ごとの自分のパフォーマンスが確認できますが、“Outcome Index”ページではLearning outcomeごとの評価がひと目で分かるようになっています。

例えば私の#deductionというスキルの平均パフォーマンスは3.03と表示されています(下記 画像11参照)。#deductionの概念は9月6日の授業で最初に紹介されましたが、その後の授業や研究課題にも他のスキルと合わせて歯車式に繰り返し応用することで、概念自体の正しい理解を深めることはもちろん、スキルの活用法を学んでいきます。(ミネルバで1年目に習う“HCスキル”についての簡単な説明については日本人同級生 日原翔によるこちらの記事を参考にしてください)

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スキルを正しく使用していても3の評価が与えられるだけなので、教授にもよるが4の評価を取ることさえ難しい。逐一数字で表示される評価に敏感な学生もいるが、個人的には「良い評価を取るため」ではなく「過去の間違いから自分が学習しているか」を確かめるための指標にしている。(画像11)

また、教授は世界各地に点在しているものの、他の大学のようにオフィスアワーを設けているので、個人的な質問をしたい時に個別に話をすることができます。教授に話しにくいことがあれば各学生についているアカデミックアドバイザーに相談することも可能です。他の学生とは寮で共同生活をしているため、簡単なことはお互いに教え合って理解を深めます。

常に進化し続けるALFを支える、技術チームの徹底したサポート体制

ミネルバの技術チームの魅力はなんと言っても、問題を投げかけた時の反応の良さ(responsiveness)と課題対処のスピードです。

ALFは現時点でも既に優れた機能を抱えていますが、時には学生が使いにくいと感じる場面もあり、硬直した完全なプラットフォームではありません。ゆえに技術チームはいつでもALFをより良いものにするための提案を募集しています。そのために作られたウェブサイトでは他の学生による 新しい機能の提案の一覧を見ることができて、共感するものに投票することもできます。技術チームの動きの透明性を高めるために、各提案には「検討中」「完了」「却下」のステータスが表示されていて、却下された場合はその理由も添えられています。部分的な改善であれば提案から一週間以内に完了することも多く、技術チームの仕事の速さにはいつも驚かされます。私も先月2つの提案をしましたが、どちらも受理され、一週間後には変更が加えられていました。

個人的にはALFが原因で授業に大きな支障が出た経験はありませんが、授業内に技術的な問題が浮上した場合は、Live Chatで即座に技術チームのサポートを受けることができます。

かなりボリュームのある記事になってしまいましたが、ミネルバの双方向的な授業を支えるテクノロジーについて、少しでも分かっていただけたでしょうか。ミネルバのALFのような オンラインプラットフォームは学校教育のみならず、企業の社員研修や遠隔会議、カスタマーサポートなど形を変えて異なる分野に導入されていくはずです。高等教育に改革を促すミネルバのアプローチが、国内で多様な学び方を展開するためのテクノロジー開発を進める方々に新しいアイディアをもたらすことに繋がればとの思いで、今回のテーマで記事を書きました。

ミネルバがALFを用いて現在の教育に対抗する一つの解決法を提案する一方で、中にはALFのアプローチが気に入らず早くも自主的に退学した学生もいます。そういったこともありミネルバは万人向けの大学では無いと言われますが、これから引き続き私がミネルバでALFを使って学んでいく中で より良いアプローチを模索し、その過程における発見を皆さんと共有して新たな解決法を世の中に提案する手助けをしていきたいと思っています。

Thumbnail photo by Milan Park

*今回の記事の執筆にあたり、ALFの知的財産権を侵害しないようミネルバ大学メディアチームにコンタクトをとりました。

**当記事の画像の使用についてはその旨を事前にお申し付けください。場合によってはお断りすることもあります。

7 replies on “ ミネルバ大学 双方向型オンライン授業を支えるテクノロジー ”
  1. この記事を拝見し、オンライン授業の技術革新が予想をはるかに超えていることに驚きです。突然ですが、私はミネルバ大学申し込みを検討中の現在高校3年、受験生をしています。留学経験も無く、TOEFL等の資格もありません。ミネルバ大学のオンライン面接で使う英語レベルはどれくらいでしょうか。

    1. そらさん、お問い合わせありがとうございます。英語のレベルを一概に計ること自体が難しいですが、参考までに申し上げると合格した多くの生徒はTOEFLで100点以上を取得しています(といっても80点代で合格している生徒もいます)。ミネルバの入学試験は思考力を問うものであって英語力の試験ではないので、語彙の難しさでいうとセンター試験と大して変わらなかったと思います。受験料が無料な上にエッセイを書く必要もないので、失うものは何もないと思って受験してみてはいかがでしょう。

      1. 返信ありがとうございます。ミネルバ大学の公式ホームページを英語で理解するのがやっとのレベルなのですが、本当に行きたい大学ですので挑戦してみます。

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